心と体が反比例 どうして私はあなたしか愛せないんだろう

 

私の恋心は今も過去から抜け出せない

過去と今の狭間で私一人が置いていかれる

心の信号機はまだ赤のまま

 

 

 

 

「あ、笛吹。久しぶりじゃん!!」

…」

「何?その嫌そうな顔。久しぶりに大学時代の友人に会ったってのに」

「いや、元気そうだな」

「まぁね、アレから色々ありまして。今ではもう大丈夫…カナ?」

「じ、実はお前に言いたい事が…」

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの旧友から聞かされた彼のこと

「え?え…笹塚が捜査一課に…?」

大学時代の恋人

「そ、そうなんだ…」

おそらく、いや、確かに私の人生で一番愛した人

彼が行方を絶ってずっと聞かなかった名前

 

笛吹の話を聞いてすぐいてもたってもいられなくて彼の家へ向かった

笹塚に会える

笹塚に会いたい

今はそれだけしか今私のなかにはなかった

 

 

 

「き、緊張すんなぁ…」

震えた手でインターホンを押す

 

「…はい?」

「あ、あたし。です。」

…?」

 

ドアが開かれ中に招かれた

久しぶりに見た彼の顔

なんか…何だろう…

「老けた?」

「久しぶりに会って第一声がそれかよ…」

「え?あ。あはははいやいやお互い様ですよ」

「…はァ、まぁいいや。何か飲む?」

「いや。良いよ。顔見たかっただけだし」

意外と部屋は片付いてる気がする

あれ、この人片付け苦手じゃなかったっけ?それに見たところ台所も綺麗…

「さ、笹塚って料理する人だっけ?」

「あ−うん…まぁたまに」

随分長い事あってなくて色々と話が弾んだ つっても私の話ばかりだったけど…

 

でもこうやって話してると思ってしまう

 

 

 

 

 

ねぇ、貴方が行ってしまう時に残した私宛の言葉は私に気を使ったものなんだよね…?

今でも私のこと…好きだよね…

だから今だって部屋に入れたんでしょう…?

一緒に過去から踏み出そう…

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、笹塚…私…」

 

 

なんていいところで鳴るインターホン

本当に良く出来たタイミングだこと…

 

「悪ぃ、ちょっと」

「あ、ううん。出てきなよ」

 

はぁなんて最悪なタイミング…

宅配のお兄ちゃんかしら?それともセールスのおじさん?おばさん?

誰にしろこの行き場の無いモヤモヤを作り出した責任とって欲しい…

 

 

 

彼はすぐに帰ってきた

「誰だったの?」

私のモヤモヤを作り出した人は…

「あ−…」

歯切れが悪いなぁ…

「えっと…彼女」

 

 

 

 

え…

 

 

か、彼女…?

 

 

 

 

「え?何で!!?何で追い返したの!!?」

「いや、客がいるなら買い物して来るって…」

「いやいや。彼女優先してよ…全く相変わらずというか…」

なんて彼女の心配してるけど本当は内心動揺しまくってる

今彼女いるんだ…

結局過去から抜け出せてないのは私だけだったんだ…

 

 

「帰るよ、私」

「…悪い…また時間あったら」

「うん、話そうね」

もう二人では会えないよ…

会いたくない

 

 

彼女が居るという近くのコンビニまで並んで歩く

「じゃ、また」

「うん、ばいばい」

 

横断歩道で別れて信号を待つ

ふと後ろを、コンビニを振り返る

幸せそうに微笑む彼

その横で微笑む私じゃない彼女

 

彼女と目が合った

私よりも随分若くて綺麗な子…

微笑む彼女

私の老いや醜さ、愚かさを嘲けるような 勝ち誇ったような

妖艶な…

 

 

 

 

過去の交差点
今も甘い貴方の姿が私を捕らえて離さない

 

 


知らぬ間に新しい彼女がいたとか
笹塚さんらしくはない…のかな??
(20071127)